環境省自然環境局長賞受賞 〜霧島小学校〜
  
 12月6日,環境省(東京都)で開催された「第39回全国野生生物保護実績発表大会」に霧島小学校6年生の森永嘉幸くんと西田千夏さん,担任の窪田健作教論が参加されました。

 この大会は,子どもたちの野生生物保護への関心と理解を深めることを目的に昭和41年から毎年開催されているもので,野生生物の調査・保護活動を通じて得た経験や活動状況の発表が行われます。

 今年の大会には,全国から選ばれた小中学校・団体10組が参加。霧島小学校は,4年前から取り組んでいるキリシマミドリシジミについて,その生態や成長過程,放蝶までの取組みなど,日頃の活動成果を発表され,「環境省自然環境局長賞」を受賞しました。
  
「よみがえれキリシマミドリシジミ」
    
    鹿児島県霧島町立霧島小学校
    発表者 森永嘉幸 西田千夏

1 はじめに

私たちの霧島小学校は,標高1500mほどの山々が連なった雄大な霧島連山の麓,標高400mのところに位置しています。霧島山は昭和9年に日本で最初に国立公園に指定されたたいへん美しい山です。霧島小学校の校門を入ると校舎の後ろに高千穂峰がどっしりと控えています。
霧島小学校は,創立125年の歴史をもつ学校です。児童数83名,そのうち6年生は10名という小規模校です。学校では霧島の恵まれた自然と歴史を生かした活動がたくさん行われています。

2 霧島とキリシマミドリシジミ
霧島小学校では,6年生が総合的な学習の時間(「かがやきタイム」)にキリシマミドリシジミという蝶を育てています。この活動は今年で4年目になります。
キリシマミドリシジミは,1921年7月15日に霧島山において発見された体長4p前後の蝶です。オスは羽の表が光沢のあるエメラルドグリーンをしていて見る角度によって色が変化するたいへん美しい蝶です。
その美しさから「森の宝石」と呼ばれるほどです。昔は,霧島山でも舞う姿が見られたようですが,今では数も減り,なかなかその姿を確認することはできません。また,たいへんデリケートで飼育が難しい蝶だといわれています。
私たちは,この霧島山で発見され,減りつつある貴重な蝶を,専門家の亀山充先生(日本鱗翅りんし学会)の指導を受けながら飼育し,森に返す活動を行っています。

3 実際の活動
(1)キリシマミドリシジミの飼育活動と生態の学習キリシマミドリシジミは,春に卵から孵化し,1か月半ほどで成虫になります。学校では4月〜5月の2か月ほどをかけて飼育活動に取り組んでいます。
@ 卵取り(4月上旬)
教室でキリシマミドリシジミの説明を聞いた後,霧島山の麓の森へ卵を取りに行きました。卵はアカガシの芽の元に産み付けられています。直径が0.9oほどの白い卵です。アカガシの枝の先についている木の芽を高枝はさみで切り取り,卵が付いていないか確認します。卵が小さいうえに数が少ないので見つけるのがたい
へんです。一人10卵の採集を目標にしています。
◆学習「食草について」

A 孵化(4月中旬〜下旬)
採集した卵は,プラスティックの小さなケースに入れて孵化させます。森と同じような環境にしないとなか
なか成功しません。霧吹きで適度な湿り気を与えます。
◆学習「キリシマミドリシジミの生息地」

B 幼虫の世話(4月下旬〜5月中旬)
孵化した幼虫は体長2oほどでたいへん小さく肉眼では見つけられないほどです。観察や世話にはルーペを用います。幼虫はケースに1匹ずつ入れて飼育します。1齢幼虫から4齢幼虫までの間が最も忙しく気の抜けない時期です。毎朝学校に着くと,飼育ケースの中のフンの掃除,えさ(アカガシ・アラカシの芽)の交換,記録を行います。幼虫が大きくなるにつれて,フンも多くなるのでたいへんです。えさを確保するのも大事な仕事です。そこで,学校の周囲のアラカシやアカガシのマップを作ってえさを絶やさないようにしています。
また,森に出かけ,自然の中での幼虫の観察もします。
◆学習「シジミチョウ科の蝶」「変態」

C 蛹〜羽化(5月中旬〜下旬)
終齢幼虫の後,蛹になりしばらく静かな状態が続き,羽化の日を待ちます。羽化に失敗するチョウもたまにいます。オスはエメラルドグリーン,メスは薄黒に青紫の模様の美しい羽をもちます。
成虫は,吹き流しに入れて飼育します。えさとしてスポーツドリンクを薄めたものを与えています。
◆学習「天敵・寄生」「だまし,おどし,擬態」

D 放蝶
成虫になったキリシマミドリシジミを卵を採集した森に放します。採集した卵のうち成虫になり,森へ返せるのは約3割です。1年目14頭,2年目25頭,3年目34頭,そして4年目の今年は21頭でした。2か月間ほど世話をしたキリシマミドリシジミを森に放すのは,喜びと同時に寂しさもあります。育て親の私たちの手を離れ,森の中をうれしそうに飛んでいる姿を見ると感動で胸がいっぱいになります。蝶を放した場所で翌年たくさんの卵がみつかるようになり,私たちの活動の成果を感じています。

(2)標本づくり
学習を生かして,チョウの標本づくりも行っています。蝶の採集を行い,展翅板を用いて丁寧に作業していきます。標本づくりを通して,チョウの体の仕組みや美しさが一層理解できます。

(3)飼育ガイドブックの作成
昨年度,講師の亀山先生から教えていただいたことをまとめて,飼育ガイドブックを作成しました。キリシマミドリシジミの飼育はたいへん難しいので,飼育の手助けと学習のまとめとしてクラス全員で分担して作成しました。

(4)アカガシの植樹
食草であるアカガシを校内に植えました。キリシマミドリシジミが卵を産み付ける木を毎日観察することができるようになりました。学校のアカガシが大きくなり,いつかキリシマミドリシジミが卵を産み付けにくることを期待しています。

4 環境保護活動
キリシマミドリシジミの学習を通して,私たちのふるさと霧島にはこんなすばらしい宝物があることに気付きました。そして,キリシマミドリシジミにとってもっと住みやすい環境を取り戻したいと考えました。そこで,キリシマミドリシジミの飼育活動の後,私たちの霧島の環境が今どうなっているのか,また地球上ではどんな環境問題が起こっているのか調べ学習を行っています。
昨年は,霧島川の水質調査,酸性雨の問題,オゾン層破壊の問題など,一人一人がテーマを決めて調べ学習を展開しました。実験や図書室,インターネット等で調べたことをまとめ,発表会を行い,話し合いをしました。また,調べたことをまとめて校区内の商店などに掲示してもらい,地域の皆さんにも知ってもらうようにしました。
その他,学校周辺の清掃活動や霧島山のごみ拾い等を行い環境保護に努めています。

5 終わりに
これまで,キリシマミドリシジミという貴重なチョウが私たちのすぐ近くに生息していることも知りませんでしたが,このような飼育活動を通して,改めて,ふるさと霧島の自然のすばらしさを実感することができました。また,直径0.9oほどの小さな卵からきれいなチョウへ成長する過程を通して,生命のすごさ,すばらしさを体感することができました。そのことにより命の大切さとそれを守り続けていくことの必要性を学びました。
これからは,森における卵の数や生息地域の環境の調査などを行い,取組に生かしていきたいと考えています。また,キリシマミドリシジミのことや自然の大切さをもっとたくさんの人に知ってもらえるように活動を工夫していきたいと考えています。
私たちの取組は,まだ始まったばかりで失敗の繰り返しですが,一頭でも多くのキリシマミドリシジミを森に返していきたいと思います。そして,また昔のように,霧島山でたくさんのキリシマミドリシジミが舞う姿が見られることを目指して,霧島の環境保護に取り組んでいきたいと思います。
  
 
その他の話題